心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「だから、馬車を使わずにレオと馬で帰ってきたと? 騎士団にはきちんと報告してあるのか? 護衛がレオだけで足りると? 今回は何事もなく帰ってこれたが、もし誰かに襲われていたらどうする」
「……ごめんなさい」
マリアがシュンと落ち込んだのを見て、レオが慌てて間に入ってきた。
「騎士団にはちゃんと報告してあるし、マリアは俺の馬に一緒に乗せて、両隣にも騎士を配置させてた! だから……」
「だから安全だと?」
グレイの闇を感じる暗い瞳にギロリと見られ、レオは一瞬ビクッと身体を震わせる。
それでも負けじと、なんとか言葉を続けた。
「馬車より安全……ではないよな。ごめん、次からは気をつけるよ」
「マリアも、もうしません」
心から反省して、子犬のように瞳をウルウルさせながらグレイを見つめるマリアとレオ。
グレイは昔からこの2人のこの顔に弱かった。
「……はぁ。反省したならいい」
グレイの言葉に、マリアとレオの顔がパアァと明るくなる。
こんなところも昔から変わらないし、そっくりだな……とグレイはため息をついた。
マリアが上目遣いにグレイを見つめながら、少しだけ遠慮がちに聞いてくる。
「じゃあ、お兄様はもう怒ってない……?」
「ああ」
その返事を聞くなり、ぎゅうっとマリアがグレイに抱きついた。