心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
『マリアと数秒目を合わせ、顔を赤くした者は失格だ!』
そんなエドワード王子の無茶苦茶な審査に合格できたのが、レオだけだった──というのは、騎士の中では有名な話である。
元々、マリアに救われて再度騎士への夢を与えられたレオにとっては、マリアの護衛騎士になることは願ってもないことであり、心から喜び誇りに思った。
しかし……。
『いいか! マリアに変な男が近寄らないよう、しっかりと守れよ!』
『隣国の王子がマリアを狙っていると報告が入った。なんとか遠ざけろ』
『自分がいない場所では、あまり着飾らせないようにしろ!』
『露出の多い服は絶対に着せるなよ』
などなど、口うるさい自称婚約者やシスコン兄からの余計な命令が多く、レオは常々『護衛騎士とは……?』と自分の職務内容について考えるのだった。
レオを見上げているマリアは、小さな声で自信なさげに呟く。
「……お兄様は、私が帰ってきて嬉しくないのかな」
「そんなわけないだろ」
条件反射のように、すかさずにそう返事をしていた。
グレイに確認したわけではないが、それは違うと断言できる。