心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「でも、なんだかいつもと様子が違うし。抱きついたらすぐに離されちゃったし。もしかして私、お兄様に嫌われ……」
マリアがそこまで言った時、レオは少しだけ力を込めてマリアの腕をグッと掴んだ。
「それは絶対にない。グレイがマリアを嫌いになることはないよ」
「……レオ」
真っ直ぐにマリアを見つめるレオの瞳は、微かな揺らぎすらない。それが嘘のない心からの言葉だと、マリアにはしっかりと伝わったようだ。
かといって、不安はそう簡単には消えないのだろう。
まだ眉を下げたまま、マリアはポツリと呟く。
「じゃあ、なんでお兄様は私を拒否したんだろう……」
「それは……」
レオはどこまで話していいのかわからず、口をつぐんだ。
直接グレイから本心を聞いたわけではない。なにせ、本人ですらわかっていないのだから。
ほぼ確定だと思うものの、それを自分の口から言うのはさすがに抵抗があるため、レオは何も言うことができない。
言えるわけないんだよなぁ。
マリアを女として意識したんじゃないか……なんて。