心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「それはダメだよっ!! 同じ部屋ってだけならまだしも、同じベッドは……」
「マリア様、お待たせいたしました」
レオが声を荒げたと同時に、部屋にメイド達が戻ってくる。
先頭にいるエミリーは、美味しそうなデザートの乗ったカートを押しながら声をかけてきた。
「わぁっ……! 美味しそう!」
「料理長が張りきって作ってましたよ」
久々に見るヴィリアー伯爵家料理長のデザートに、マリアはレオの前からエミリーの横に素早く移動した。
余程嬉しいのか、レオとの会話が途中だというのにデザートに夢中になっている。
「マ、マリアッ」
「ほら。レオも一緒に食べよう!」
眩しいくらいの笑顔になっているマリア。そんなマリアを見て安心しているメイド達。
そんな中、レオ1人だけが真っ青な顔になっていた。
抱きつかれただけで、無意識にマリアを離してしまったグレイの姿がレオの脳裏に浮かぶ。
突然、夜に寝巻き姿のマリアが部屋にやってきて、一緒に寝たいと言われたなら……グレイはなんて答えるのだろうか。
また拒否してマリアを傷つけるのか。
傷つけないために、受け入れるのか。
傷つけずに部屋に入れないのが1番いいのだが、そんな器用なことがグレイにできるとは到底思えない。
今夜この2人がどんなやり取りをするのか、レオは想像するだけで頭が痛くなってくるのだった。