心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ドキドキドキ……鼓動がどんどん速くなる。
入ってもいいか聞こうと思ってるのに、喉がカラカラになっていて声が出ない。どうしようか困っていると、目の前の扉が突然開いた。
「……こんな時間にどうしたんだ?」
上から自分を見下ろしているグレイ。
少し長い前髪の隙間から見える碧い瞳。寝巻き代わりであるシャツのボタンを、胸元まで開けている。
普段のキッチリとしたグレイとは違う、ラフでどこか色気のあるその姿に、マリアは顔を赤くした。
「あ、の……ひ、1人でいるのが久しぶりで、その、ちょっと怖くて、今日はお兄様と一緒に寝たくて……」
「!」
マリアの言葉に、グレイは目を丸くする。
その後すぐに、呆れたように目を細めてマリアに苦言した。
「マリア……怖いって、お前はもう17歳だろう」
「じゅっ、17歳でも、怖いものは怖いのっ」
「…………」
グレイの軽蔑したような呆れたような視線が痛い。しかし、ここで負けては追い返されると思ったマリアは、なんとか食いついた。
氷のような碧い瞳が、マリアの持っている枕に視線を移す。
「……昔と変わってないな」
フッと、グレイが柔らかく笑った。
なかなか見ることができないグレイの笑顔に、マリアの心臓はまた大きく跳ねた。
子ども扱いされるのはなんだか複雑だが、グレイの笑顔が見れるのであれば全然構わない。ここはチャンスとばかりに、マリアはグレイをジッと見つめた。
「お願い。一緒に寝てもいい?」