心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアは思っていることをそのまま口にしてみた。
部屋に入れてもらった安心感が薄れて、また不安な気持ちが大きくなっていく。
「まだ本を読んでいるからな」
「でも、前はベッドの上で読んでたのに」
「隣に俺がいたら邪魔だろう?」
「邪魔じゃないよ! 邪魔だなんて思うなら、来るわけないでしょ」
「怖かったから仕方なく来たんだろう? 俺のことはいいから、早く寝ろ」
そう冷たく言うなり、グレイは本に視線を戻す。
グレイの考えていることがわからない。
なぜ、こうも昔と態度が変わってしまったのか。
拒否せず部屋に入れてはくれたが、やはり迷惑だったのだろうか。
黒いモヤモヤが、マリアの胸の中を占領していく。
グレイに嫌われてしまったのかもしれないという不安で、胸が押しつぶされてしまいそうだ。
本当に、嫌われてるのかな……。
気づけばマリアの瞳からは涙がポロポロと流れていた。
下にあるベッドのシーツに、ポタポタと涙のシミが浮かんでくる。
「マリア!?」
グレイが勢いよく立ち上がったのがわかった。
すぐにこちらにやって来て、ベッドに腰をかける。そしてマリアの頬に手を当てると、顔が見えるようにクイッと持ち上げられてしまった。
至近距離に、グレイの碧い瞳が見える。