心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
17歳になり突然の成長期を迎え、そろそろ教えたほうがよいかとエミリーが考え始めた頃、今回の長い聖女の旅が始まってしまった。
よって、マリアはまだそういったことには無知であり、胸の話をされても嫌悪感などは感じていない。
むしろグレイと同じく「なるほど!」と妙に納得してしまっていたくらいだ。
「そういえば私、最近胸が大きくなってきたかも……」
「それが違和感の正体だったんだな」
「なんだ……そっかぁ。……あっ! お兄様は、胸が大きいのは嫌い?」
「他の女に無理やり押し付けられる時はかなり不快だが、マリアなら不快じゃない」
「よかったぁ〜!」
微笑ましいが、とても成年を迎えた男女が朗らかにする会話ではない。
そのことに、2人とも気づいていなかった。
マリアを無意識に引き離してしまった理由は、突然感じた胸の膨らみに驚いたから。
そう結論付けたグレイだったが、それにより自身がマリアを意識してしまったことについてはまだ知らぬところである。
そして、マリアは心の中で小踊りするほど喜んでいた。
お兄様が私を離したのは、胸に驚いただけだった!
私のことが嫌とかじゃなかった!
よかった〜。明日、レオに話そうっと。心配かけちゃったもんね。
このことをそのまま報告し、「バカなの!?」と顔を真っ青にしたレオに叫ばれることになろうとは、この時のマリアはまだ知らなかった。