心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
はぁーーっと一息ついたレオが、今度は真剣な顔でマリアの目をジッと見た。
「いい? マリア。もし今後そんな話をしてくる男がいたら、笑顔で会話しちゃダメだ。こう、強く睨みつけるんだ」
そう言いながら、レオは誰もいない左隣をギロッと睨みつけた。この睨み方を真似しろ、と言いたいのだろう。
マリアは目を細めてキッと睨む真似をしたが、レオは目をつぶって首をフルフルと横に振った。
「それじゃ全然怖くないよ。こういうのは、自分は嫌な気持ちです! っていうのをアピールしないといけないんだ。はい、もう1回やってみて」
マリアは眉をくねらせて、またキッとレオを睨みつける。
無意識に力が入っていたのか、マリアの両手はグーの形になっている。瞬きを忘れていたせいか、涙目にもなっていた。
真剣な表情だったレオの顔色が曇る。
「う、ううーーん。全然怖くない上に、むしろ可愛いっていうか、これはこれで興奮するヤツとかいそうだな……。んんーーどうしよう……」
「……ねぇ、レオ。なんで男の人と胸の話をしたらいけないの? 普通は嫌な気持ちになるの?」
「え? 普通……は、まぁ女性にそんな話をしたら、怒られるか嫌われるか……おとなしい人なら、泣いちゃう人もいるかも」
「そうなの? なんでだろう。背が大きくなったっていうのと、何が違うの?」
「え? 背?」
「うん。背が大きくなると、みんな喜んでくれたでしょ? それと胸が大きくな……」
「あああ、待って、待って!!」
顔を赤くしたレオが、慌ててマリアの話を止める。
そして「はぁーーっ」と大きなため息をつきながら、自分の茶色の猫っ毛をわしゃわしゃと掻いた。