心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ある程度食事が落ち着いてきた頃、やっとジュード卿が口を開いた。
「その赤ん坊は、貴女の娘ですか?」
「……はい。そうです」
食事を与えてもらったことで、エマのジュード卿に対する不信感はだいぶなくなってきていた。
ジュード卿がその気になれば、エマから聖女を奪い去ることなど容易いはずである。
それなのに、聖女に触れることもエマに近づくこともせず、食事を与えてくれた上にずっと丁寧な言葉で接してくれている。
そんなジュード卿の態度は、疑心暗鬼で疲れきったエマの心に安心感さえ与えていた。
「その赤ん坊は、聖女……ですね?」
「……はい」
「見せていただくことはできますか?」
「……どうぞ」
エマは赤ん坊を抱いたまま、顔を隠していた布を取った。
赤ん坊はすやすやと眠っている。