心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……というわけだから、一緒には寝てないの」
「そっかぁ〜! よかった!」
大袈裟なほど喜んでいるレオの反応に、マリアは目を見開いた。
自分の感情と違いすぎて、レオの言葉が理解できなかったからだ。
よかった?
お兄様が私と一緒に寝てくれなかったのに、よかった?
「さすがにグレイもそこはちゃんと考えてたんだな〜。部屋に入れた、ベッドの上で抱きしめたって聞いて、心配しちゃったよ。いや〜よかった、よかっ……た……」
そこまで話したレオは、マリアの顔を見て言葉を止めた。
唇を尖らせて、ムスッとした顔をしている。マリアが怒っている。
それに気づいたレオは、すぐにマリアの気持ちを察した。
「あ、えーーと。マリアにとっては、そのーーよくはない……よねぇ?」
「私は悲しかったのに。レオってば、そんなに喜ぶなんてひどい」
「ごめん、ごめん。つい……! でも、俺はグレイとマリアが一緒に寝てなくて安心したよ」
「!! どうして?」
「友人にはまともに順序を進めていってほしいからさ」
「?」
レオの意味深な言葉に、マリアの頭の中には ??? がたくさん浮かんだ。
どういう意味なのか問い詰めたいが、こうやってレオが言葉を濁すには理由があることもわかっている。きっと聞いたところで詳しく教えてはくれないだろう。