心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 マリアはすぐにエドワード王子に駆け寄り、レオは後ろで軽く頭を下げた。


「久しぶりだね。元気だった?」

「…………」

「エドワード様?」


 エドワード王子はブスッとした顔のまま、返事をしない。
 王子のこんな表情には慣れているため、マリアは動揺することなくキョトンと王子を見つめた。
 マリアにジッと見つめられたエドワード王子は、一瞬頬を赤くしたかと思うとすぐに文句を言ってきた。


「なんで、すぐに俺のところに来なかったんだ?」

「え?」

「3ヶ月ぶりだろ。なんで先に研究室に行ってんだよ」


 どうやら、王宮に来て真っ先に研究室に向かったことが気に入らないらしい。
 エドワード王子とは特に約束もしていなかったし、今日ここに来た1番の理由は研究室に行くことだったマリアにとって、この言いがかりには首を傾げるしかない。


「なんで……って、だって王宮(ここ)に来た目的が研究室だから……だけど?」

「なっ……!?」


 正直にそう答えると、王子はショックを受けたような顔をした。怒っているようで、どこか悲しんでいるようにも見える。

 エドワード王子は1番に会いに来てほしかったのだろうか……と思ったマリアは、申し訳なさそうに王子を見上げた。
 背の高い王子の顔を見るためには、どうしても上目遣いになってしまう。


「1番に会いに来なくて、ごめんね?」

「うっ……!」


 王子の顔がボッと赤くなった。
 マリアの後ろに立っているレオが、なぜか小さなため息をついている。
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