心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「ど、どうせ俺に会いに来るつもりなんかなかったんだろ? さっき、研究室に来るのが目的だったって言ってたしな」
頬を赤くしながら少し拗ねたように言うエドワード王子の言葉を、マリアはすぐに否定した。
「そんなことないよ! 私、エドワード様にお話があったし。今日、会えるかな? って思ってたよ!」
「本当か? 俺に……話が?」
「うん! ……あの、できれば2人だけで話したいの」
「!!」
レオに聞こえないようにこっそり言うと、エドワード王子は一瞬目を見開いた後にガシッとマリアの腕を掴んだ。
マリアが何事かと思っていると、王子がレオに向かって命令口調で言い放つ。
「マリアを俺の部屋に連れていく。話を聞かれたくないから、部屋の中には入ってくるな」
「えっ!?」
レオがギョッと驚くと同時に、エドワード王子はマリアを引っ張って歩き出した。
レオが慌てて小走りで2人の後を追ってくる。
「エドワード殿下! あの、会話が聞こえない距離にいますので、自分も部屋の中に入っても……」
「ダメだ!」
「で、では、お部屋ではなく中庭などでは……」
「俺の部屋のほうが近い!」
レオが焦りながらしてくる提案を、ことごとく却下していくエドワード王子。
なぜレオがこんなにも王子の部屋に行くのを避けようとしているのか、マリアにはわからなかった。
でも、レオの顔を見れば本気で困っているのはわかる。