心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

「そこの……椅子に座れば?」

「あ、うん。でもその前に、飲み物用意するね」

「あ、ああ……」


 エドワード王子の部屋には、いつも冷たいドリンクが大きめのボトルに用意されている。
 カットしたフルーツやお花などが入った水なのだが、見た目も可愛らしくマリアも大好きであった。

 そのドリンクをグラスに注ぎ、テーブルに置く。
 先に座っていた王子は、その様子をソワソワしたまま黙って見ていた。
 準備を終えたマリアが王子の前に座るなり、王子はすぐに話を切り出してくる。


「そ、それで、なんだよ。俺に話って」

「あーー……えっと、ちょっとエドワード様に聞きたいことがあって」

「聞きたいこと?」

「うん。あのね……」


 王子は緊張した顔で、ドリンクを口に含んだ。
 何かに期待してるかのように目を輝かせ、真剣にマリアの言葉を待っている。


「胸が大きくなったって話を、なんで男の人としたらいけないの?」

「ブフォッ!!!」


 口に入っていたドリンクを、王子が盛大に噴き出す。
 身体を少し斜めに向けていたおかげか、マリアのいない方向に噴き出していたのは幸いだろうか。
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