心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 はぁ……。こんなに怒ってるんじゃ、もうなんでダメなのかって聞けないよ。
 でも、まぁ……今度男の人に話したらエドワード様にその人が捕まってしまうし、これからはしないようにしなきゃ。



「はーー……。マリアが俺に話したいことがあるって言ってたのは、そんな話だったわけ?」


 ガッカリしたようにため息をつきながら、エドワード王子が不満をたれる。
 怒って疲れたのか、足を組んでだらけるように椅子に座り、まだ少しだけドリンクが残っているグラスを手に取った。

 王子に促され、マリアは他にも相談したいことがあったのを思い出す。


「あっ! もう一つ、聞きたいことあったんだ!」

「なんだよ。また変な話じゃないだろうな?」

「変なことじゃないよ。私の悩みっていうか……」

「悩み? マリアに悩みなんてあるのか?」


 エドワード王子は失礼なことを言うなり、ドリンクを口に含んだ。
 そんな嫌味に気づいていないマリアは、気にした様子もなく相談を始める。この質問ならば、王子は怒ることなく答えを教えてくれるだろう……と期待して。


「あのね、昨日お兄様が私と同じベッドで寝てくれなかったの」

「ブフォッ!!!」


 エドワード王子は先ほどと同じように、口に含んだドリンクを盛大に噴き出した。
 完全再現された王子の様子を見て、マリアの顔にはうっすらと冷や汗が浮かぶ。



 ……あれ? これも言ったらダメだった?
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