心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
思いも寄らない王子の言葉に、マリアは一瞬思考が停止する。
今言われた言葉の意味が、すぐには理解できない。
結婚? 結婚しようって言った? ……誰と誰が?
「だれ……」
「俺とマリアが、だ」
マリアの心を読んだのか、すぐに王子が求めていた答えを言ってくる。しかし、マリアの混乱は増すばかりだ。
エドワード王子は昔からあまり冗談は言わないし、今も真剣な顔をしている。ふざけて言っているわけではなさそうだ。
なんでエドワード様が私と結婚を?
それに、なんでこのタイミングで?
エドワード王子は椅子に座ったまま、立ち上がっていたマリアを上目遣いに見ている。
手が握られたままなので、少し距離をあけることもできない。
いつもならすぐ顔が赤くなってしまう王子とは、こんなに長く見つめ合ったことがなかった。真剣すぎるエドワード王子の姿に、今日はマリアの方が戸惑ってしまう。
至近距離で見つめ合ったまま、マリアは口を開いた。
「な……なんで? いきなりどうしたの?」
「いきなりじゃない。もう10年も前から言ってるだろ」
「婚約の話? それはその時に断って終わった話じゃ……」
そこまで言うと、エドワード王子が軽くジロッと睨みつけてきた。口が拗ねたように尖っている。
「お前……俺がこの10年間婚約者を作らなかったのはなぜか、わかってないのか?」
「え……す、好きな相手ができなかった……から?」
「違う」