心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
ガタッ! と王子が立ち上がる。
下に向けていた視線が、一気に見上げる形に変わった。手はまだ握られたままだ。
「好きな奴はずっといた」
「え……? じゃあ、なんで私と……」
「だから! ……その好きな相手がマリアなんだけど!」
「…………え?」
シーーン……と静まり返る室内。
お互い立ったまま手を繋ぎ、見つめ合う2人。
そのうち、ずっと真顔だったエドワード王子の顔がみるみる赤くなっていった。
「あああーーっ! ……っ、なんでいきなりこんな事言わなきゃいけないんだ! くそ! あの偽兄のせいで!」
王子はマリアの手を離し、頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。耳まで真っ赤になっている。
そんな照れている王子に向かって、マリアは真剣に問いかけた。
「え、あの。ちょっとわからないんだけど、エドワード様って私のことが好きだったの?」
「……そうだよ!!」
怒っているのか自棄になっているのか、王子はしゃがんだまま床に向かって叫んだ。
顔を絶対に上げようとしない。
王子にいつも怒られていたマリアは、自分が好かれているとは思ったことがなかった。
告白されても、照れるとか気まずいなどという気持ちはなく、ただただ驚いていた。
え……いつから? 全然わからなかった……。