心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「でも、なんで急に結婚?」
「……お前が兄と一緒に寝てるなんて言うから」
「えっ? 私とお兄様が一緒に寝てると、なんで結婚しようって話になる……」
マリアがそこまで言うと、グイッと下から手を引っ張られた。
身体のバランスが崩れて、床にペタンと座り込んでしまう。
「わっ……! ちょっ、エドワード様。何……」
突然手を引かれて驚いたマリアが文句を言おうと顔を上げると、さっきよりも近い距離にいた王子と目が合った。
頬にはまだ赤みが残っていて、エメラルドの瞳は熱を帯びている。
今まで見たことのない王子の顔に、マリアはドキッと心が揺れたのがわかった。
「好きな女が他の男と寝てると聞いて、黙ってられるか」
「好きな女……」
「そうだよ! 好きだから他の男に触れさせたくないし、そんな話を聞かされたら相手をぶっ殺したいくらいに腹立ってる」
「ぶっ殺……!?」
時折出るエドワード王子の暴言に驚きつつも、その真剣な気持ちがいやというほど伝わってくる。
言葉遣いは悪いが、ここまでの好意を見せられたなら嬉しくもなる。
しかし、グレイを殺したい発言をされては嬉しく感じている場合ではない。