心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「本当にお兄様に何かしたりしないよね?」
「……マリアが俺と結婚するなら、何もしない」
「ええっ!?」
マリアの困った顔を見て、王子は視線を外した。
横を向いて悔しそうにため息をつき、ボソッと呟く。
「嘘だよ。そんな卑怯なことができるなら、とっくにやってる」
「…………」
安心していいのか微妙だが、とりあえず今すぐグレイに何かするつもりではないということにホッとするマリア。
エドワード王子は昔からこうだ。
口は悪いし態度も悪いけど、実は結構優しかったりする。
マリアはそんな王子のことが好きだったし、大切な友達だと思ってきた。
……なんだか、今目の前にいるエドワード様は別人みたい。
態度も口の悪さも変わってないが、マリアへの好意を打ち明けた王子は、開き直ったかのようにその素直な想いをぶつけてくる。
いつもと違う王子をジッと見つめていると、いつの間にか王子の手がマリアの腰に移動していた。
ん!?
マリアが気づいた時には、いきなり立ち上がったエドワード王子にお姫様抱っこされていた。
「えっ? なっ、何?」
「今からマリアの家に行くぞ。兄に、お前と婚約すると伝える」
「ええ!? 待って! まだ私、結婚するなんて言ってないよ!」
「じゃあ俺が結婚するつもりだってことを伝えに行く」
「なんで!?」
「マリアに手を出すなっていう宣戦布告だ」