心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……エドワード様?」
「……なんでもない」
なんでもないと言っているわりには、出ている耳が真っ赤になっている。
微かに手が震えているように見えるのは気のせいだろうか? とマリアは首を傾げた。
なんとか落ち着いたらしいエドワード王子は、ゴホンと咳払いをするなり再度スタスタと扉に向かって歩き出す。
マリアが小走りで追いついた時には、王子は扉を開けて廊下にいたレオに声をかけていた。
「レオ。ヴィリアー伯爵家へ行くぞ」
「えっ? 今からですか? 何をしに……」
「マリアと婚約する。それを伝えにいく」
「ええっ!? マリアと婚約!?」
レオが目を見開いて、王子の後ろに立っているマリアを見た。
本当に!? という顔をしたレオに向かって、マリアは無言で首をブンブンと横に振る。
マリアの複雑そうな顔を見て、レオは色々と察したらしい。少し遠慮がちに王子に提案した。