心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「あの……本日は急でグレ……ヴィリアー伯爵も忙しいでしょうし、また後日改めてのほうがよろしいかと」
「一言伝えるだけだ。それくらいの時間なら取れるだろ」
「ですが……」
レオがここまで食い下がるのは、勝手に婚約の話を進められているマリアのためでもあるが、もう一つ理由があった。
恐ろしい事態を防ぐためである。
エドワード王子が約束もなく突然やってきて、マリアと婚約すると宣言したなら……グレイの反応を考えるだけで、レオはゾゾゾッと鳥肌が立った。
確実に魔王の降臨である。
しかも、相手もまた剣の腕が立つ若き王子……鬼神だ。
この2人がぶつかり合う姿など、想像するだけで恐ろしい。
レオの顔は真っ青になった。
そんなレオの不安などお構いなしのエドワード王子は、すでに外に出ようと歩き出していた。
マリアとレオは無言のまま目を合わせ、慌てて王子の後を追う。
エドワード王子を止めるのは無理だと悟った2人は、グレイにどう説明しようかと頭を悩ませるのだった。