心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
毛布の下には本が挟まっていた。
タイトルを見たグレイが、その美しい顔をひどく歪ませる。
『無自覚な王子は恋を拗らせる』
どう見ても恋愛小説であるその本を、グレイはガイルに投げつけてやりたくなった。
たとえそんなことをしても、この男なら華麗に避けてしまうであろうことが予想されるので、なんとか理性で止める。
「今のグレイ様には必要かと思いまして」
「また、こんなくだらない本を読めと? 言っておくが、今までに読んだ本に何かを学んだことはない。ただ気分が悪くなるだけだ」
「左様でございますか。グレイ様はまだまだお子様でいらっしゃるのですね」
「……なんだと?」
無表情のガイルが、急に小さな孫でも見るような甘ったれた目でグレイを見てきた。
ゾゾゾ……と寒気がすると共に、苛立ちが増す。
なんて腹立つ顔をしてるんだ、このジジイは。
誰がお子様だ!
「俺のどこがお子様なんだ? レオに言うならともかく、理解ができないな」
グレイは腕を組み、苛立つ表情を隠しもせずにガイルを問い詰める。
しかし、そんなグレイに怯むような男ではなかった。ガイルは挑発するかのように怪しい笑みを浮かべながら、会話を続ける。
「おやおや。この件に関しては、レオ様のほうがグレイ様よりもずっと大人でいらっしゃいますよ」
「レオのが大人!?」
「はい」