心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
普段から失礼な言葉を言ってくる執事だが、グレイがここまで衝撃を受けたのは初めてではないか……というほど、グレイはショックを受けていた。
いつまでも子どものように感情豊かで正直者のレオ。
そのレオが自分よりも大人だと言われ、グレイは放心状態だ。
あのレオよりも、俺が子どもだと?
……ふざけてやがる。
「そんな冗談は笑えないな」
「冗談ではございません。レオ様であれば、今グレイ様が感じている胸の違和感の答えもご存知でしょう」
「!?」
ガイルはそれだけ言うと、しれっとした態度で「では」と言って部屋から出て行った。
自分の手にはまだ先ほどの本が握られていることに気づき、グレイはチッと舌打ちをする。
何も話していない自分の状況を把握されているというのは、なんとも気分が悪い。
グレイは本をソファに放り投げ、マリアの眠っているベッドに視線を向けた。ガイルとの会話は小声だったため、起きてはいないようだ。すやすやと寝息が聞こえる。
この違和感の正体を、レオは知っているだと?
マリアが帰宅してから、ずっと感じている違和感。
モヤモヤして居心地が悪いこの感情を、レオなら対処の方法がわかるというのか。
今すぐにでもレオから聞き出したいと思いつつ、グレイは思いとどまった。
たとえこの違和感を解消することができるとしても、レオに教えを乞うなんて冗談じゃない。それはグレイのプライドが許さなかった。