心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 レオでもわかることだ。
 俺だってわかるはずだ…………おそらく。
 


 あまり自信はないが、そう思うしかない。
 グレイは考えるのをやめて、ソファに横になった。ベッド以外で寝るのは久しぶりだ。幼い頃はたまにここで昼寝をしていた記憶が微かにあるが、よく覚えてない。

 寝心地は決していいとは言えないが、マリアの隣で寝るよりは眠れそうだとグレイは感じていた。
 マリアの近くにいると鼓動が速くなる時があるので、熟睡できる気がしない。まだ眠くはなかったが、グレイはとりあえず目を瞑るのだった。





 ……それでやっと眠れたのは朝方だったんだよな。
 


 グレイは目頭から指を離し、執務室を見回した。
 自分以外は誰もいない静かな空間。ある意味グレイが1番落ち着ける場所でもある。
 マリアは朝から王宮に行くと言っていたので、余計に屋敷全体が静かなのかもしれない……とグレイは思った。



 王宮に行ったということは、あの生意気王子にも会ってるのか?



 グレイの頭の中に、目つきの悪い金髪の美青年が浮かぶ。
 会うたびに睨みつけてくる、可愛げのないこの国の第2王子様。

 さっさと婚約者でも作ればいいものの、この10年そんな話は一切聞かない。王子が全ての縁談を断っているという噂まである。
 まだマリアを諦めていないのかと、グレイの苛立ちは増すばかりだ。
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