心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
レオでもわかることだ。
俺だってわかるはずだ…………おそらく。
あまり自信はないが、そう思うしかない。
グレイは考えるのをやめて、ソファに横になった。ベッド以外で寝るのは久しぶりだ。幼い頃はたまにここで昼寝をしていた記憶が微かにあるが、よく覚えてない。
寝心地は決していいとは言えないが、マリアの隣で寝るよりは眠れそうだとグレイは感じていた。
マリアの近くにいると鼓動が速くなる時があるので、熟睡できる気がしない。まだ眠くはなかったが、グレイはとりあえず目を瞑るのだった。
*
……それでやっと眠れたのは朝方だったんだよな。
グレイは目頭から指を離し、執務室を見回した。
自分以外は誰もいない静かな空間。ある意味グレイが1番落ち着ける場所でもある。
マリアは朝から王宮に行くと言っていたので、余計に屋敷全体が静かなのかもしれない……とグレイは思った。
王宮に行ったということは、あの生意気王子にも会ってるのか?
グレイの頭の中に、目つきの悪い金髪の美青年が浮かぶ。
会うたびに睨みつけてくる、可愛げのないこの国の第2王子様。
さっさと婚約者でも作ればいいものの、この10年そんな話は一切聞かない。王子が全ての縁談を断っているという噂まである。
まだマリアを諦めていないのかと、グレイの苛立ちは増すばかりだ。