心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
エドワード王子からの問いに、グレイは黙った。
王子の言っていることは何も間違っていない。その通りのはずだ。
しかし、グレイはすぐにそれを肯定することができなかった。
マリアが王子との結婚を望めば、反対はしない……?
今、グレイが反対してる理由は『マリアが望んでいないから』である。つまり、マリアが望めば反対する理由はなくなるはずなのだ。
だが……もしマリアが望んだとしても、快くマリアを王子に引き渡せる気がしない。
グレイはマリアをチラッと横目で見た。
王子の質問にグレイがどう答えるのか不安なのだろう。眉を下げ、心配そうな顔をしている。
グレイは王子に向き直り、正直に答えることにした。
考えていてもよくわからないからだ。
「反対しない……という約束はできません。相手が誰であろうと、たとえマリアが望んでいようと、俺がマリアを他の男に渡すのは嫌なので」
「!」
不安そうな顔から一転、マリアはカァッと顔を赤らめ、嬉しそうに瞳を輝かせた。
レオはギョッとして目を見開いているし、無表情のガイルからはどこか満足そうな雰囲気が漂ってくる。
エドワード王子は、苛立ったのか呆れたのか……口元をヒクヒクさせて嫌味っぽく言い返した。
「そういうことを無自覚に言うところ……マリアにそっくりだな。本当にこの兄妹は……!」
「?」