心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
グレイとマリアがキョトンとしている中、レオとガイルは小さくうんうんと頷いていた。
そういうこと? 無自覚に言う?
……一体なんのことだ?
グレイはエドワード王子の言っている意味がわからなかったが、その意味を問うのはなぜかプライドに障る気がしたのでやめておいた。
エドワード王子が苛立っている様子なので、そのままでいいだろう。無意識のうちに王子に攻撃できていたらしいことに、グレイはひっそりと満足した。
王子はせっかく堂々とした態度を続けていたのを崩され、いつも通りの不機嫌顔に戻っている。
「……まぁいい。今日はそれを伝えに来ただけだからな。邪魔した……行くぞ、マリア」
「えっ?」
振り向きざまにマリアの手を掴むなり、スタスタと部屋から出て行こうとする王子。
そんな王子を見て、グレイは瞬間的に声を出していた。
「エドワード殿下!」
「なんだ?」
「……なぜマリアを連れて行くのですか?」
王子は部屋の入口でピタリと止まり、背中を向けたまま顔だけ動かしグレイを見た。
王子に手を掴まれているマリアも、困った視線をグレイに向けている。
レオは青い顔をして王子とグレイを交互に見ていた。