心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「はぁ……」
「グレイ様、今回はなかなかでございました」
「……は?」
グレイがため息をつくと、ずっと黙っていたガイルが上から目線な言葉を投げかけてきた。
思わずグレイの眉間に深いシワが寄る。
褒めているようで小馬鹿にしているその言葉を流せるほど、今のグレイには心の余裕がない。
「……どういう意味だ?」
「グレイ様のお言葉に、マリア様はとても喜ばれておりました」
「……!」
マリアが喜んでいた? ……何に?
先ほどのエドワード王子の会話の中に、マリアが喜ぶような話があっただろうか……とグレイは記憶を少し巻き戻してみる。
しかし、どの言葉がマリアを喜ばせたのかまるで検討がつかない。
グレイはただエドワード王子に苛立ち、エドワード王子の言い分を否定していただけだった。
「俺はマリアと王子の結婚は反対する……ということしか言ってないが」
「それ! でございます」
「!?」
それ! の瞬間、ガイルの目がカッと見開いたので、グレイは思わずビクッと身体を引いてしまった。
すぐに普段の落ち着いたガイルに戻ったが、それがまた余計に恐ろしい。