心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 疑心暗鬼から門番にも聖女のことを伝えなかったとは、なんとも間抜けである……が、それが自分にとってチャンスであることにジュード卿は気づいた。



 聖女誕生を王宮に伝えていない。
 さらに、生まれたことすら誰にも話していない。
 ……これは神が俺に与えた最高の好機だ……!



「ということは、聖女の存在を知っているのは私と貴女だけということでしょうか?」

「はい」


 ジュード卿は、ニヤリと笑ってしまいそうになるのを一生懸命こらえた。

 不信感を持たれないように、なんとか誘導して聖女を俺のモノにする……そう思ったジュード卿は、赤ん坊を抱いていない方のエマの手を優しく握る。

 エマがビクッと反応して頬を赤く染めた。
 拒否されてはいないようだ。
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