心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
私がエドワード様に好かれてるとは思ってなかったのと同じで、エドワード様も私に好かれてるとは思ってなかったのね。
なんでだろう?
マリアがそんなことを考えていると、王子にガシッと両肩を掴まれた。
気づけば王子との距離が近くなっている。
「じゃあ、そのまま俺のことを男として好きになるんだ! わかったな!」
「ん?」
男として好き……って何?
「マリアの中で今は兄が1番なのはわかったが、さっきの言い方だと兄のことも男として好きなわけではないんだろう? だったら、俺のことを男として好きになれ!」
「お、男として好きって、何……?」
「恋愛の意味で好きってことだよ!」
「それって、普通の好きと何が違うの?」
「…………」
マリアの純粋な質問に、エドワード王子の顔がピキッと固まる。
無知なマリアを責めるように目を細めると、王子は普段より少し低い声でボソッと呟いた。
「……こういうことをしたい相手ってことだよ」
「え……」
そう言ったエドワード王子の顔が近づいてくる。
エメラルドの瞳がすぐ目の前にあり、鼻先が触れそうになる。
王子がキスをしてこようとしているのを、マリアは感覚で察した。