心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 レオの慌てた「エドワード殿下!」という叫びが聞こえた瞬間、マリアは両手で王子の口を覆った。


「むぐ……っ!」


 口を覆われた王子の声が漏れる。
 かなり近い距離だったので、手の反対側はマリアの唇に少し当たっている状態だ。手のひらに感じるエドワード王子の息がくすぐったい。
 キスを寸止めされた王子は、ピキッと顔をこわばらせゆっくりと顔を離した。
 王子の手はまだマリアの両肩に置かれている。


「……本当にするわけないだろ!! ちょっとドキッとさせたかっただけなのに、口を覆うか!? しかも両手で!!」


 完全なる八つ当たりであるが、マリアはそれを素直に受け入れた。


「あ、ごめん。つい」

「ついって、無意識に拒否されたみたいで余計に傷つくんだけど! 全然ドキドキもしてないみたいだし!」

「なんでドキドキ?」

「もういいから! ……って、ま、まぁこんなことをした俺も悪かったけど……ごめん」


 怒っていながらも、モゴモゴと自分も謝ってくる。
 自分の感情に素直なエドワード王子は、やはり可愛らしくて憎めない。


「でも、これでわかっただろ? ここで拒否しない相手が、男として好きってことなんだよ」

「キスできる人ってこと?」

「そ、そうだよ! 俺のことを、そういう目で見ろって言ってんの。わかるか?」

「んーー……わか……った?」

「……絶対にわかってないだろ」

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