心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 エドワード王子が呆れた目で見てきたが、マリアはニコッと笑って誤魔化すことにした。
 意外と効果があったようで、王子は小さくため息をついてマリアの肩から手を離した。


「まぁいいや。今日はもう帰る。なんかすっっごく疲れたからな」

「うん。じゃあ、また今度」

「王宮に来たら必ず俺のところにも来いよ。それから……もう兄と一緒に寝るのは禁止だ」


 突然の話題に、マリアはキョトンと王子を見つめた。
 王子は真剣な顔をしているので、冗談とかではなさそうである。
 グレイとマリアが一緒に寝たことをなぜ王子が知っているのかと、レオの顔が青ざめたことに2人は気づいていない。


「なんで?」

「危険だからだ」

「危険って何が?」

「……マリア。お前、今夜は俺と一緒に寝るか? 何がどう危険なのか、俺が一晩中じっくりと教えてやる」

「エエエエドワード殿下っ!!」


 ニヤリと怪しく笑ったエドワード王子に、レオが離れた場所から大声で叫んだ。
 マリアが意味がわからず「??」と戸惑っていると、王子はプッと吹き出して肩を震わせる。


「冗談じゃないが冗談にしてやる。マリアが教えてほしいっていうなら、俺はいつでもいいから王宮に泊まりに来い」

「?? ……わかった」

「とにかく、もう夜に兄の部屋に行くなよ!」


 エドワード王子はそう言うなり、馬車に乗り込み帰っていった。
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