心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 馬車が見えなくなってから、レオがマリアの隣にやってきた。
 やけにげっそりと疲れきった顔をしている。5歳は老けたように見えるくらいだ。


「レオ、大丈夫? 顔色悪いけど」

「大丈夫……。この場にグレイがいなくてよかったと、何度思ったことか……」

「?」


 ヨロヨロとしているレオには早く休んでもらいたいが、その前にマリアはレオに聞きたいことがあった。
 遠い目をしているレオに向かって、マリアは問いかけた。


「ねぇ、レオ。さっきエドワード様が言ってた、危険ってどういう意味だろう?」

「え!? えーーーーとぉ……」


 生気のなかったレオがカッと目覚めたかのように目を見開き、そしてその目を斜め上に向けた。どう説明しようか、そもそも説明していいものかと迷っている。
 こういう反応をされた場合、高確率で教えてもらえないことをマリアは学んでいた。



 ……やっぱり、なんでも教えてくれるのはエドワード様だけね。



「私、明日王宮に泊まりに行こうかな?」

「絶対にダメ!!!」


 レオに提案してみると、秒で却下されてしまった。
 ここまで強く大声でダメ! と言われたことがなかったマリアは、驚いて目を丸くする。


「どうして? エドワード様はいつでもいいって……」

「ダメダメダメ!! いい? マリア、そのこと絶対にグレイには言っちゃダメだよ!?」

「そのことって?」

「エドワード殿下の部屋に泊まりに行くって、冗談でも絶対にグレイの前で言っちゃダメ! わかった!?」

「……わかった」

< 564 / 765 >

この作品をシェア

pagetop