心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
馬車が見えなくなってから、レオがマリアの隣にやってきた。
やけにげっそりと疲れきった顔をしている。5歳は老けたように見えるくらいだ。
「レオ、大丈夫? 顔色悪いけど」
「大丈夫……。この場にグレイがいなくてよかったと、何度思ったことか……」
「?」
ヨロヨロとしているレオには早く休んでもらいたいが、その前にマリアはレオに聞きたいことがあった。
遠い目をしているレオに向かって、マリアは問いかけた。
「ねぇ、レオ。さっきエドワード様が言ってた、危険ってどういう意味だろう?」
「え!? えーーーーとぉ……」
生気のなかったレオがカッと目覚めたかのように目を見開き、そしてその目を斜め上に向けた。どう説明しようか、そもそも説明していいものかと迷っている。
こういう反応をされた場合、高確率で教えてもらえないことをマリアは学んでいた。
……やっぱり、なんでも教えてくれるのはエドワード様だけね。
「私、明日王宮に泊まりに行こうかな?」
「絶対にダメ!!!」
レオに提案してみると、秒で却下されてしまった。
ここまで強く大声でダメ! と言われたことがなかったマリアは、驚いて目を丸くする。
「どうして? エドワード様はいつでもいいって……」
「ダメダメダメ!! いい? マリア、そのこと絶対にグレイには言っちゃダメだよ!?」
「そのことって?」
「エドワード殿下の部屋に泊まりに行くって、冗談でも絶対にグレイの前で言っちゃダメ! わかった!?」
「……わかった」