心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
しかし、教師役と生徒役を全力で楽しんでいる2人には聞こえていない。
マリアは初めてレオから色々教えてもらえることが嬉しくて、普段よりもテンションが高くなっていた。
「まずは、恋愛感情とは何かを教えようと思う」
「はい! 先生」
「恋愛感情っていうのは、この前エドワード殿下が言っていた『男として見ろ』っていうのと同じなんだ」
「! それ、わかる。キスできる相手ってことなんでしょ?」
マリアが黄金の瞳をキラキラと輝かせてそう答えると、エミリーがギョッとした目をレオに向けた。
エドワード王子がマリアにキスしようとした話は誰にも言っていなかったため、突然マリアの口から『キスできる相手』という言葉が出てきて驚いたからである。
なぜマリアがそんな答えを言ったのか……とエミリーから疑いの目で見られ、レオは慌てて言い返した。
「そ、それも間違ってないけど、とりあえずそのことは忘れて」
「?」
レオはわざとらしくコホンと咳払いをすると、人差し指を立てて説明を始めた。
「まず、恋愛感情は同時に2人に感じたりはしないんだ。相手はただ1人。その人とうまくいかなかった時は、その人を諦めて違う人を好きになることもある。でも、基本的に恋愛の意味で好きな相手は1人だけだ」
「恋愛の意味で好きになるのは1人だけ……」
実際には同時に2人も3人も好きになれる人もいるけど──という話は、今はしないことに決めた。
レオは机にある『恋愛感情』の紙を指差し、マリアと目を合わせながらキッパリと告げる。