心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 レオが爆弾でも見るような目でマリアへの手紙を見ている。
 エミリーもレオの考えをすぐに察したのか、レオと同じような顔をしている。
 ガイルだけは顔色を変えないまま、優しくマリアに問いかけた。


「マリア様。こちら、開けてもよろしいでしょうか?」

「うん。もちろん」


 マリアが答えるなり、ガイルはペーパーナイフを取り出しサッと一瞬で手紙を開けた。
 そして、そのままマリアに手渡す。
 マリアはまず声には出さずに先に1人で手紙を読んだ。


「……親交パーティーの招待状だわ。それと……当日は私をエスコートしたいって」

「あああっ!! やっぱり!!」


 レオはそう叫ぶなり頭を抱え、エミリーは頭痛がしてきたのかこめかみ辺りを押さえて目を閉じた。
 どうやら2人にとってあまり良くない展開らしいが、何が問題なのかわかっていないマリアは首をかしげながら2人に尋ねる。


「何かいけないの?」

「……マリア。その王子からの誘い、受けるの?」

「断れるの? 王宮の特別な用紙に、エドワード様と陛下のお名前まで書いてあるのよ。これはただの手紙じゃなくて、命令証書のようなものだわ」

「……断れない……ね」


 今までも、何度かエドワード王子にパートナーとして誘われたことがある。そのどれもが全て口頭で誘われており、承諾したことも断ったこともある。
 しかし、ここまで正式な形で誘われたのは初めてであった。
 無知なマリアでも、これは断ってはいけないものだということくらいわかる。

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