心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
他愛もない会話のはずなのに、なぜかマリアの心臓はドキドキと動きが速くなっていた。
答えが知りたいのに、聞くのが怖い。
そんな複雑な感情の中、マリアはジッとグレイを見つめた。
いつも明るいマリアがやけに真剣な顔をしていることを不思議に感じながら、グレイはチラリとレオに視線を向ける。
「まだ決まってない。だからレオを呼んだんだ。レオ、誰か俺のパートナーとしてパーティーに参加できそうな令嬢を探しておいてくれ」
「えっ!? 俺が!?」
心底驚いたのか、レオはガバッと勢いよくソファから立ち上がった。
目を丸くして、自分自身を指差している。
「お前なら顔が広いからなんとかなるだろ。このことで婚約者になりたいなどと言い出さないような、面倒じゃない女がいい。家柄とか容姿はなんでもいい。それなら簡単に探せるだろ?」
「簡単なようで難しいよ!! 婚約者のいない令嬢じゃなきゃダメなのに、さらに婚約をグレイに求めない人って時点ですでに思いつかないんだけど!?」
「きっとどこかにいる。探せ」
「適当すぎる!!」
予想外の頼み事に慌てて言い返していたレオは、ハッ! と隣にいるマリアの存在を思い出しバッとそちらに顔を向けた。
マリアは呆然とした様子でグレイをボーーッと見つめていて、焦点があっていない。
グレイがあっさりとパートナーの女性を探そうとしている事実に、想像以上のショックを受けている。
ほ……本当に、お兄様が誰かをエスコートしながらパーティーに参加するの……?