心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
そうであるとはわかっていたが、もしかしたら参加しないかもしれないという小さな希望も持っていた。
それが目の前で打ち砕かれ、マリアの頭の中は真っ白になっている。
そんなマリアの様子を見て、隣でレオがハラハラしているのも目に入ってない。
「わ……私、お兄様と一緒に行きたい!」
このまま黙っていたら、誰か知らない女性がお兄様のパートナーに決まってしまう! と焦ったマリアは、気づけば正直な気持ちを叫んでいた。
必死なマリアを見てもグレイは動揺せず、淡々と冷静に答える。
「……マリアはエドワード殿下からエスコートを申し込まれているだろ」
「そうだけど! 誰か他の人にしてくださいって、エドワード様に頼んでみる!」
「……ダメだ。マリアはエドワード殿下と一緒に行くんだ」
「!」
グレイにはっきりと断られたことで、マリアはさらにショックを受けた。
しかし、この場で1番驚いた顔をしているのは、マリアではなくレオであった。
目をまん丸くし、今のは聞き間違いか? という疑わしそうな視線をグレイに送っている。
そんなレオを、グレイはジロッと睨みつけた。
「なんだ?」
「え……いや……ほ、本当にグレイ?」
「は?」
レオの意味不明な言葉に、グレイの眉間のシワが深くなる。
「だ、だって、いつものグレイだったら自分から『王子は断れ』って言いそうなのに……。マリアとエドワード殿下がパートナーになるの……嫌じゃないの?」
「……今回はそれでいいんだ」