心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアは7歳まで特殊な環境の中で育ったせいで、一般常識や人の感情に疎い。
しかし何かを教わったり学んだ場合の理解力は良く、勉強もすでに年齢相応にはついていけている。
つまり、マリアが鈍く無知なのはただ知らないだけであり、知ってしまえばきちんと察したり考えたりできるのだ。
「エドワード様は……恋愛の意味で私が好きなの?」
「! そ、そうだよ!」
「じゃあ……私をパートナーに誘ったのも、適当じゃなくて私とペアを組みたいって思ってくれたから?」
「そうだけど!? なんだよ、適当って! そんな風に思ってたのか!?」
王子はショックを受けた様子で叫んだ。
急に王子の心情を理解し始めたマリアに、驚きを隠せていない。
自分の気持ちにやっと気づいてもらえたことに、王子は喜ばしいような恥ずかしいような複雑な表情をしている。
そうだったんだ……それなのに私ったら「パートナーを変えてほしい」なんて言っちゃうなんて……。
だからエドワード様はあんなに怒ってたのね。
事情を知ったマリアは、理解力が早かった。
しかし、自分に好意を向けられて恥ずかしいとか照れるといった感情は感じてはいなかった。
そのため、今もマリアは普段と何も変わらない態度のままエドワード王子と会話を続けている。
「私、何もわかってなかったんだね。ごめんね」
「……なんで急にそこまでわかるようになったんだよ……」
本当にお前はあのアホなマリアか? とでも言いたげなエドワード王子に、マリアはニコッと微笑みかけた。
呆れ顔をしていた王子の頬が、カァッと赤くなる。