心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 汗を滲ませている額に手を当てて、意識を集中させる。
 眩い黄金の光がグレイの頭を覆い、癒していく。
 眉間に寄っていたシワがだんだんと薄くなり、息遣いも落ち着いてきた。



 もう少し……!



 実は、グレイがひどい頭痛で倒れるのは初めてではない。
 赤ん坊のマリアがこの家に来た頃──ヴィリアー伯爵家が崩壊を始めた頃から、年に数回はおきていた。

 年々激しくなっていくこのグレイの頭痛は、普通の薬では簡単に治らない。
 マリアの治癒がない場合は、丸1日苦しむことになるのである。



 私がこの家を3ヶ月あけてる間に、聖女の薬がなくなっちゃったのね。
 王宮に行ったのだから、研究室からいくつか分けてもらえばよかった……!



 マリアがそう後悔したと同時に、治癒が終わる。
 今日が月のある日でよかったと思いながら、マリアはベッドサイドにあったタオルでグレイの額の汗を拭いた。


「お兄様……ごめんなさい……」

「……マリア?」

「!」


 グレイの目がうっすらと開いたので、マリアは膝立ちしていた身体を少し浮かせてグレイの顔を覗き込んだ。



 よかった! 意識が戻っ……。



 そうマリアが安心した瞬間、グレイの腕が伸びてきた。

 背中に回されたその腕に押されるように、マリアの身体はグレイの上に乗りかかる。
 もう片方の腕も背中に回り、ぎゅうっと強く抱きしめられた。



 ……え? あれ? 


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