心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
マリアの顔はグレイの胸元に押し潰されるようにくっついている。
背中はガッチリと締めつけられていて、全く身動きがとれない。
少しだけ汗ばんだグレイの熱い体温に、マリアの鼓動がすごい勢いで速くなっていく。
な、何この状況?
私、お兄様に抱きしめられてる!?
今まで何度もグレイを抱きしめたことのあるマリアだが、よく考えたらいつも抱きしめるのはマリアからであり、グレイから一方的に抱きしめられるのは初めてであった。
しかもこんなにも強く抱きあったことはなく、その密着度にだんだん頭がパニックになっていく。
わあああどうしよう!!!
どうしたらいいの!? 心臓がドキドキしすぎてて苦しいっ……!
寝ぼけているのだろうか。グレイは激しい頭痛から解放されて、心地良さそうな寝息をたてている。
マリアを抱きしめていることにも気づいていないようだ。
ちょっ……ちょっと……えーーん。
これ、どうしたらいいのーー!?
半泣き状態のマリアは、グレイを起こすこともできず……ただうるさいくらいに跳ねている自分の鼓動を感じながら、グレイが起きるのを待った。