心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
グレイに対して嫉妬の感情を抱いたと、数分前に自覚したばかりだった。
あとはドキドキがあれば、グレイへの気持ちは恋愛感情だと言えるだろうと考えていた。
今、まさにその『ドキドキ』を感じてしまっている。
やっぱり、私は恋愛の意味でお兄様のこと……。
そう頭の中で結論付けた途端、マリアは無性に恥ずかしくなった。
しかし、何に対して恥ずかしいのかわからない。
初恋の自覚に対して恥ずかしいのか、今のこの状態が恥ずかしいのか、今までのグレイへの態度や行為に対して恥ずかしいのか。
うわあ……どうしよう!
さっきよりも、もっとドキドキする……!
自分の顔を見ることはできないが、マリアは自分の顔が真っ赤になっているであろうことを自覚していた。
グレイの体温が高いのか、自分の体温が高くなっているのか、汗をかいてしまいそうなほどに熱い。
頭がクラクラする感覚にマリアが戸惑っていると、頭の上から小さな声が聞こえた。
「……ん……」
「!」
グレイの腕がモゾ……と動き、抱きしめられている力が弱くなった。拘束が緩み、少しだけ動けるようになる。
ひとまず離れて心を落ち着かせようと、マリアが顔を上げた瞬間──至近距離で薄目を開けたグレイと目が合った。
「…………」
「…………」
「……マリア!?」