心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイは少し長い前髪をかき上げるようにして、自分の額に手を当てる。
 左の眉尻の上あたり。そこが痛かったところなのか、とマリアはその仕草に見惚れながらボーーッと考えていた。
 グレイの仕草1つ1つに胸がときめいてしまう。



 変だよ、レオ……。
 もうお兄様に触れていないのに、まだドキドキしてるの……。



 マリアは胸の前で手をギュッと握りしめ、心臓を押し付けるようにして強く胸に食い込ませる。
 そうでもしないと、心臓が飛び出してしまうのではないかと思ったからだ。
 そんなマリアの様子に気づいていないグレイは、マリアから視線を外したまま問いかけてきた。


「あーー……それで、なんで……あの状態になったんだ?」


 気まずそうなグレイの声に、マリアは()()()()を思い出す。
 グレイの上に乗り、密着していた先ほどまでの自分達──。


「あ……あれは、その、お兄様の治癒が終わったあとに、様子を見ようと近づいたら……その……」

「……俺がマリアを抱き寄せたのか?」


 抱き寄せた──という言葉に、マリアはボッと顔を赤くした。
 

「う、うん……」

「そうか…………はぁ」


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