心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「……ど、どうして私にそこまで……」
「私は聖女にずっと憧れておりました。だから、聖女に会えて本当に嬉しいのです。その母である貴女が苦しむことがわかっているのに、王宮へ行かせたくはないのです」
エマは真っ直ぐにジュード卿を見つめている。
心が揺れているのは一目瞭然だ。
ジュード卿は目をそらすことなく彼女を見つめ返した。手は先ほどからずっと握ったままだ。
「私が貴女達を幸せにします。ぜひ、我が家へいらしてください」
エマの心は揺れていた。
突然の提案に頭がついていけてなかったのである。
エマはジュード卿の嘘を見事に信じてしまっていた。
ジュード卿から聞いた、聖女の母に対する王宮の酷い行いを知り、心底この国に幻滅してしまったのである。