心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない


 ……あれは、やっぱり俺が? 
 意識のない中で、マリアを?



 自分で自分が信じられない。
 しかし、俺がそんなことをするはずがないと思う一方で、心のどこかではそれを望んでいたのではないかとも思ってしまう。

 なぜなら、あの状況に驚きはしたものの嬉しくも感じていたのだから。


「あーー……それで、なんで……あの状態になったんだ?」


 自分が原因ではないかと思いつつも、念の為グレイはマリアに確認することにした。
 ベッドの横に立っているマリアは、気まずそうに手をモジモジさせながらも答えてくれる。


「あ……あれは、その、お兄様の治癒が終わったあとに、様子を見ようと近づいたら……その……」

「……俺がマリアを抱き寄せたのか?」

「う、うん……」

「そうか…………はぁ」


 やっぱりな……と、グレイは自分に呆れた。思わず深いため息までついてしまう。
 ベッドに女性を引き込むなんて、紳士としてあるまじき行為である。

 しかしマリアは妹であり、一緒に同じベッドで寝たこともあるし、抱きしめたことも抱きしめられたこともある。
 特に問題はないだろうが、一応謝罪しておくか……とグレイはマリアに視線を向けた。


「マリア……」

「あのっ! 私っ! しっ、失礼します!!」

「えっ?」

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