心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイの返事を聞いて、レオがおずおずと部屋に入ってきた。
 部屋の中を確認している素振りがないため、すでにマリアがいないことは知っているらしい。


「頭痛はもう大丈夫なの?」

「ああ。……で、なんだ? 俺の体調を見に来たんじゃなく、何か話があってきたんだろ?」


 グレイが尋ねると、レオは目を丸くしてグレイを凝視した。
 なんでわかるの? と言いたげなその顔を見て、グレイはなんてわかりやすすぎる男なのだろう……と呆れた。


「あのさ、マリアがガブール国の王太子に狙われてるって本当なの?」

「……エドワード殿下に聞いたのか?」

「うん。だからグレイは、マリアがエドワード殿下のパートナーになるのを反対しなかったんだね」


 やけに納得した顔をしているレオに、グレイは素直に頷いた。


「ああ。女癖の悪い王太子の暴走を止めるには、あの生意気王子がピッタリだからな」

「暴走って……。確かにいい噂は聞かないけど、さすがに聖女には無礼は働かないだろ……とは思いたいけどね。でも、エドワード殿下とペアを組んでたら安心だし、今回はそれでよかったかもね」


 レオの答えに、今度はグレイが意外そうな顔でレオを見た。
 そんなグレイの反応に、レオも少し驚いている。


「な、何……?」

「いや。お前のことだから、それくらいならマリアとペアを組んでやれと言い出すと思ったから」

「言うわけないだろ! もし王太子が本当にマリアを狙ってきたら、グレイは絶対に王太子相手に喧嘩を売るに決まってるんだから! それこそ大変だろ!」

「…………」

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