心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
レオに馬鹿にされているようで腹が立つが、その通りだと自分でも思ってしまったのでグレイは言い返さなかった。
まだ若造の伯爵が、友好国の王太子に喧嘩を売ったとなったら大問題……どころでは済まない。
それならまだ王子同士で揉めてるほうが、相手も手を出しにくいはずである。
「俺はパーティー当日は王宮の警護だけど、マリアとその王太子をよく見ておかないとなーー……って、そういえばグレイ! マリアと何かあった?」
突然の会話の切り返しに、グレイはグッと変に息を吸い込んでしまった。
ゴホッと軽く咳き込みながら、レオの質問には答えずに聞き返す。
「……なんで、そんなことを聞くんだ?」
「さっき、マリアが真っ赤な顔で廊下を走っていくのを見たんだよ。呼んだけど、気づかなかったのかそのまま行っちゃってさ。ここに来てたんだろ? 何かしたのか?」
「何か……したって……」
グレイの煮え切らない答えと、どこか気まずそうな態度を見てレオの表情が一気に真顔に変わる。
疑いの目でグレイを見ながら、レオはグレイのすぐ隣に座った。
「ちょ、ちょっと? 何その反応? ま……まさか、グレイ……本当にマリアに何かしたんじゃ……」
レオは、グレイの汗をかいてかき上げられた前髪や、ボタンの数個していない乱れたシャツ、そして自分が今座っているベッドをジロジロと目を動かしながら凝視している。
一体何を想像しているのか、顔は真っ青だ。
「おい。何を疑ってるんだ」
「だって! マリアの様子は絶対におかしかった! 何したの!? グレイ!」