心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 聖女を生んだのだから、これからの私には幸せが待ってるんだと思ってた……。
 まさかそんな扱いをされるなんて、全然知らなかったわ。どうすればいいの……?



 ジュード卿からの提案はとても魅力的なものであった。
 聖女だけでなく、母親のエマの安定も保証してくれている。

 聖女である赤ん坊にとっては、王宮へ行く方が色々と手厚く待遇され、厳重に警護され、安泰な暮らしができるだろう。

 ジュード卿の家に行けば、今よりは断然幸せに暮らせるものの、国民から受けられたはずの賞賛も崇拝される未来もなくなる。

 子どものことを考えるのであれば、王宮を選ぶべきなのだ。

 だが、エマの中では自分の子どもの幸せよりも、自分の幸せのほうが大事であった。


「……はい。こちらこそ、よろしくお願いします」


 エマのその言葉を聞いて、ジュード卿はにっこりと微笑んだ。
 作ったような笑顔だが、エマにはとても素敵な紳士に見えていた。
 
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