心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
「でも、マリアはたぶんグレイに対してそんなことは思ってないはずだよ! 避けてるけど……まぁ、それはまた違う感情っていうか……」
「どんな感情だ?」
「いや。それは俺の口からは言えないけど……あっ!」
なんとか話題を変えようとしたレオは、何かを思い出したのか目をパチッと見開いた。
そしてすぐに気まずそうな視線をグレイに向ける。
今から話そうとしていることが、グレイにとって良くない話であることは明白だ。
「そういえば、頼まれてたパートナーの件だけど……1人、希望してくれてる令嬢がいるんだけど」
「そうか。じゃあその令嬢でいい」
「えっ? 誰だか聞かないの?」
「別に誰でもいいからな。それに、聞いたところでわからないし」
興味なさすぎるグレイの様子に、レオがオロオロと慌てだした。
話を進めていいと許可を出したのに、提案してきたレオのほうが迷っているみたいである。
「……なんだ? 何か問題でもあるのか?」
あまりにも不自然なレオの態度に、グレイはそう尋ねた。
なぜだか嫌な予感がしている。
「その……令嬢なんだけど、ベティーナなんだ。覚えてる? 元クラスメイトで、聖女お披露目パーティーの時にグレイに話しかけてきたピンク色の髪の令嬢……」
「べティーナ?」