心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイは聖女お披露目パーティーのことを思い浮かべる。
 確かに、会場に着いてすぐ話しかけてきた令嬢がいた──気がする。

 顔は思い出せないが、ピンク色の髪はなんとなく記憶の片隅に残っている。


「ほら。グレイにエスコートしてほしいって言ってた令嬢、いただろ?」

「ああ……そういえば、そんな奴がいたな」


 そこまで言われて、グレイはやっと思い出すことができた。
 直接エスコートしてほしいだなんて言ってきた令嬢は、後にも先にも彼女だけだったからだ。



 あの女か……顔は思い出せないが。



 そんな人物がいたという記憶はあるが、顔や会話の内容までは思い出せない。
 しかし、面倒で鬱陶しい令嬢だったことだけは覚えている。
 グレイは露骨に顔を歪め、レオを睨んだ。


「なんであの女なんだ? 俺は『俺との婚約を求めてこない女』を条件にしたはずだが?」



 確か、あの女は俺の婚約者になりたかった……とレオが言っていたよな?


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