心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない

 グレイに睨まれたレオは、ため息をつきながらべティーナを候補にした理由を話し出した。
 そのめんどくさそうな表情から、レオ自身もべティーナをよく思っていないことが伝わってくる。


「べティーナの兄が同じ騎士団にいるんだ。それで、俺がグレイのパートナーを探していることを知って、この前直接べティーナが俺のところに来たんだよ」

「なるほどな。まだ結婚していないどころか、婚約者すらもいないのか?」

「らしいね。彼女はすごく人気があるんだけど……理想が高いんだよ」

「……はぁ。他に候補の令嬢はいないのか?」

「いることはいるんだけど、べティーナの兄が副団長なんだよね」

「……?」


 レオの頓珍漢な答えに、グレイは一瞬何を言われたのか理解できなかった。
 他の候補がいるかどうかと、べティーナの兄が副団長だということが何か関係しているのか。

 グレイからの冷めた視線を感じ取ったレオが、慌てて付け加える。
 

「あっ、えっと。俺は騎士団の知り合いに声をかけてたんだ。そこで他にも何人か候補が上がったんだけど、その……副団長が……」

「妹を優先させろ、と言ってるわけだな?」

「まあ……うん。そんな感じ」



 ……なんて面倒な兄妹なんだ。



 チッと心の中で舌打ちをすると、グレイは深いため息をついた。
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