心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
何かを諦めたかのような、どうでもいいと放置したかのようなグレイの雰囲気に、レオは申し訳なさそうな表情になった。
「まあ、後日婚約を迫ってこないなら誰でもいい」
「! 大丈夫! それはしっかりべティーナにも副団長にも伝えてあるから!」
「ああ。じゃあそれで話を進めておいてくれ」
「わかった! 贈るドレスはどうする? 好みが知りたいなら、俺から副団長に……」
「ドレス? ……贈る?」
なんとか話がまとまって安心した様子のレオは、キョトンとした顔でそんな質問をしてきたグレイを見て固まった。
そして、すぐに全てを理解したようで焦り出す。
「そ、そうか! グレイは今まで誰も誘ってこなかったから……!」
「なんだ?」
「パートナーにはドレスを贈るのがこの国の風習なんだよ! 毎回ではないけど、これほど大きなパーティーの場合は必ず! いくらグレイでもある程度準備はしてると思ってたのに……まさか、デザイナーの確保もしてないのか!?」
「デザイナーの確保?」
「あああ! 嘘だろ!? 間に合わなかったら、大変だぞ!?」
コンコンコン
慌てふためくレオを冷静に見守っていると、突然扉をノックされた。
グレイの返事とともに部屋に入ってきたのは、完璧執事のガイルである。
このタイミングでガイルが入ってきたことで、今レオが慌てている内容はほぼ心配なくなったなとグレイは確信した。