心を捨てた冷徹伯爵は聖女(義妹)を溺愛していることに気づいてない
9 洗脳されていくエマ
ジュード卿の屋敷に足を踏み入れたエマは、その広さに口を大きく開けたままポカンと立ち尽くしていた。
貴族の屋敷の中に入るのは初めてであった。
街のホテルよりも部屋数が多く、窓枠や扉や飾られている花瓶までもが凝ったデザインをしていて、平民のエマから見ても高級品だというのがわかる。
エマはそれらに触れないように気をつけながら、ジュード卿の後について歩いた。
玄関や廊下では、数人の使用人がエマと赤ん坊をジロジロと見ていたが、ジュード卿は紹介や説明をすることもなくスタスタと進んでいく。
ジュード卿が入っていった部屋について行くと、そこには6歳くらいの男の子と、その母親と思わしき綺麗な女性がソファでくつろいでいた。